人生100年時代を迎え、長い老後に向けて自分自身で資産形成する重要性がこれまで以上に増しています。
しかし、投資を始めたいけれど、一度にまとまった金額は用意できないとか、専門知識やノウハウがなく具体的な金融商品の選び方が分からないといった理由で、最初の一歩を踏み出すことができないという人も多いでしょう。
最近は、そんな人でも投資が始められるサービスが増えています。
たくさんの資金が必要というイメージは昔のもので、今は少額の現金やポイントで投資をする方法があります。また、投資に関する特別な知識やノウハウはなくても、ごく基本的な知識で始められるサービスもあります。
まずは、まとまった資金がないという理由で投資に二の足を踏んでいる人向けのサービスを紹介します。
100円から投資信託の積立が始められる通称「100円投信積立」
ネット証券などでは、100円から投資信託の積立が始められる通称「100円投信積立」が人気を集めています。毎月、毎週のほか、毎日というサイクルでも、積立が可能なサービスを提供している金融機関もあります。
いきなり大きな金額を投資してしまうと、値段の上がり下がりに一喜一憂し、とくに、相場下落時にはどうしても冷静な判断ができなくなってしまうものです。投資金額が少なければ、比較的冷静な判断や分析が可能となり、投げ売りなどの誤った判断による損失発生の可能性も低くなります。100円なら、コーヒー1杯を節約する感覚で、投資にチャレンジできるのではないでしょうか。継続することで投資の知識やノウハウが蓄積されたら、少しずつ投資額を増やすなど、投資を始める入り口として活用するのもよいでしょう。
ポイント投資を始める
キャッシュレス化が進む中で、買い物やサービスの購入などで貯まったポイントを利用して投資を始められるようになってきました。ポイントは日常生活の中で自然と貯まるものなので、投資のために「まずはある程度の貯蓄をしなければ」などと考える必要はありません。
もちろん投資である以上、元本保証はありませんが、手元の資金が減るわけではないので、比較的気軽に投資できるのもメリットといえるでしょう。ポイントの増減を見ることで、株価や為替に影響を与える日々の政治・経済関連のニュースにも興味がわき、本格的な投資を始めるきっかけになるかもしれません。
使用できるポイントは、さまざまな店舗やサービスで貯めたり使ったりできる共通ポイントで、例えば、クレジットカードや携帯電話会社のポイントがあります。
実は、ポイントを利用した投資には「ポイント運用」と「ポイント投資」の2種類があります。名前は似ていますが仕組みが違いますので、それぞれ確認していきましょう。
ポイント運用では、投資を疑似体験できます。申込手順も簡単で、ポイントサービスのID、パスワードなどがあれば始められます。
株式や投資信託の値動きに応じてポイントが増減する仕組みですが、個別の株式や投資信託を選択するのではなく、あらかじめ用意されたいくつかのコースから選択するのが一般的です。
例えば、あるポイント運用の場合は、アクティブコース(積極型)とバランスコース(保守型)から、自分のリスク許容度や運用スタイルに合ったコースを選択します。なお、運用したポイントは、現金化できず、ポイントで引き出すことになります。
あくまで投資の疑似体験であり現金での投資ではないので、金融機関で証券口座を開設する手間もなく、取引手数料などの経費も発生しません。そのため、後述するポイント投資と比べても、より投資初心者向けの仕組みだといえるでしょう。
ポイント投資は、保有するポイントを現金化したうえで金融商品を購入する仕組みです。ポイント自体は減少しますが、運用により利益を得た場合には現金を受け取ることになります。
ポイント投資で購入できる金融商品の種類は、株式、投資信託、ETF(上場投資信託)など、通常の投資と変わらない場合がほとんどです。株式については、1単元(100株)ではなく、1株からでも投資できるサービスを提供している金融機関もあります。
なお、ポイント運用と違い、金融機関での証券口座開設や取引手数料が必要です(利用したいポイントでの投資に当該金融機関が対応しているかの確認も必要です)。
ポイントと現金の両方を投資資金として充当することも可能ですので、投資に慣れるために最初はポイントだけで少額の投資をスタートし、慣れてきたら現金を利用した投資を始めるといったステップアップもよいでしょう。
おつり投資とは、「おつり投資アプリ」をクレジットカードや電子マネーなどと連携させ、買い物時のおつり相当額を自動的に積み立てて運用できるサービスのことです。
EX>>>
100円、500円、1,000円などの金額を「基準額」として設定し、決済した金額の端数をおつりに見立てます。例えば、320円の買い物をした場合、100円の基準額設定なら80円、500円の設定なら180円、1,000円の設定なら680円が「おつり」とみなされ、積み立てられます。そして、毎月1回、おつりの合計額が、指定の金融機関口座から自動引落しされ、事前に診断された自身のリスク許容度に応じた資産運用がETFで自動的に行われます。
一度設定すれば、自動でおつりが投資に回されるため、手間がかかりません。支出しなければ投資に回すお金も発生しないことから、定期的な積立に比べて負担感が少なく、続けやすいのもメリットといえます。サービスによっては、「おつり投資アプリ」を「家計簿アプリ」と連携させることで、買い物や投資の履歴を家計簿アプリに記録させるという便利な使い方もできます。
ただし、出金手数料や運用手数料がかかるサービスもあるため、あらかじめ確認が必要です。
ロボットアドバイザー投資
投資に関するごく基本的な知識はあるが、具体的な金融商品の選び方や運用に自信がないという人に向けたサービスとして、「ロボットアドバイザー投資」(以下、ロボアド投資)があります。
「ロボアド投資」と聞くと、AI(人工知能)を搭載したロボットによる運用をイメージするかもしれませんが、実際にはコンピューターが一定のアルゴリズムに従って自動運用する仕組みです。ただし、高リスク高リターンのイメージのある「システムトレード」とは違い、ベースとなっているのは、同程度のリスクの商品であっても値動きが違う商品を組み合わせること(=分散投資)でリスクが減り、期待される収益が高まるという考え方です。
分散投資を個人で行うにはそれなりの知識や手間が必要ですが、投資のプロなどの第三者に任せると高い手数料がかかります。そこでコンピューターに任せてコストダウンを図ろうというのがロボアド投資なのです。
また、ロボアド投資では、ETFという、手数料の安い投資信託を組み合わせるのが一般的です。ETF自体が、日経平均株価などのある特定の指数や指標の動きに連動して運用される商品として分散効果が高いといわれており、ロボアド投資と組み合わせることにより、さらに高い分散効果が期待できます。
ロボアド投資には、「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類があります。
「アドバイス型」は、リスク許容度に応じた資産配分(ポートフォリオ)の提案だけを行い、商品選定などはすべて自分で行う必要があります。自分で最終的な判断を行い運用したい人向けのサービスです。それに対して、「投資一任型」は、ポートフォリオの提案だけでなく、商品選定、実際の運用、投資対象の割合を見直すリバランスまで、アルゴリズムに基づき自動的に行ってくれます。銘柄選び、利益の確定、損切りのタイミングなどに悩む必要がなく、投資初心者に向いているといえます。
投資の専門知識やノウハウがなくても分散投資が可能
商品選定から運用までお任せにできるため、投資の専門知識やノウハウがなくても国内外のさまざまな資産クラスへの「分散投資」が可能となり、投資のリスクを軽減できます。
ロジカルな運用ができる
プロの投資家でも、人間である限り感情や思い込みを完全に排除することは難しいものです。ロボアド投資はアルゴリズムによって運用されるため、合理的に判断します。
見直しの時間や手間がかからない
サービスによって頻度は違いますが、ロボアド投資は自動でリバランスを行います。運用開始後の見直しなどの手間がほとんどありません。
このようにロボアド投資は投資初心者にとってメリットが多いですが、あくまで投資である以上、元本保証はないなど基本的なことはきちんと理解しておくことが必要です。また、自分でETFを銘柄選択してポートフォリオを組む場合と比較すれば、ETF保有に伴う信託報酬に加えて、ロボアド投資のサービス手数料分のコストがかかり続ける点には留意が必要です。
まずは、ロボアド投資のWEBサイトで無料診断を行います。質問は数件(年齢、年収、現在の金融資産額、毎月の運用予定額、資産運用の目的など)で終わるサービスもあれば、「交流会に参加したところ、知り合いが1人もいませんでした。あなたはどうしますか?」、「少し体の調子が悪いと感じました。どうしますか?」といった、性格や考え方の傾向を予測する質問があるサービスも。
質問に回答すると、自分に合ったポートフォリオや「ロボアド投資での運用で30年後には資産が○○万円になる確率が○○%」といった将来予想などが確認できます。
その後、口座開設の手続きをして、投資額、投資サイクル(毎月、毎週、毎日など)、自動引落しの設定などをして入金すると、金融商品の購入が始まります。
このように、さまざまな仕組みやサービスが増えてきています。あくまで投資である以上、元本保証はありませんが、これまで一歩踏み出せなかったという人も、長期的な資産形成に向けた第一歩として、自分に合ったサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
Comentarios